慰安婦問題について、いろんな報道: AI開発に実用される量子コンピュータ--人工知能研究を加速。インテル、シリコン製量子コンピューターの開発で前進。人工知能、がん治療で助言 国内初か 白血病のタイプ10分で見抜く。データを集めて「発明」するコンピュータ「ワトソン」とは Googleの人工知能とは異なる性格。加速する人工知能開発…日本のものづくりに勝機 国際競争の出遅れ挽回へ。

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2016年12月22日木曜日

AI開発に実用される量子コンピュータ--人工知能研究を加速。インテル、シリコン製量子コンピューターの開発で前進。人工知能、がん治療で助言 国内初か 白血病のタイプ10分で見抜く。データを集めて「発明」するコンピュータ「ワトソン」とは Googleの人工知能とは異なる性格。加速する人工知能開発…日本のものづくりに勝機 国際競争の出遅れ挽回へ。

量子アニーリング形式の量子コンピュータを開発しているD-wave
米IBMの人工知能型システム「ワトソン」(ゲッティ=共同)
 IBM Watson 日本語版 API 公開中 ワトソン (コンピュータ)

デルフト工科大学(オランダ)は、半導体メーカーのインテルと協力し、
超低温環境の量子コンピューティングを実験中
 Quantum Computing’s Wonder Material
インテルは、従来のコンピューターの処理能力を遙かに上回る
量子コンピューターを、従来の技術の延長線上に実現しようとしている。
問題の解決策が、初めからわかりきっている場合がある。
半導体メーカーのインテルは、量子コンピューター
(量子力学の特徴を利用して計り知れない処理能力を
発揮するはずの機械)の開発競争における
自社の方針を確信している。

インテルのライバルであるIBMやマイクロソフト、グーグルは、
現在のコンピューターとは異なる、量子コンピューター専用の
部品を開発してデータを大量に処理しようとしている。
しかしインテルは、現在のコンピューターの基礎材料である
シリコン・トランジスターを応用して
量子コンピューターを開発しようとしているのだ。

インテルは、オレゴン州ポートランドに
量子ハードウェアエンジニアチームを構え、
昨年設立された5000万ドルの助成金により、
デルフト工科大学(オランダ)のキューテック量子研究所
(QuTech quantum research institute)と共同研究している。
インテルの研究グループは12月上旬、半導体工場で使われる
標準的シリコンウェハー上に量子コンピューターに欠かせない
超高純度シリコンを重ねる技術を開発したと発表した。

量子コンピューターにどんな基本的構成部品が
必要なのかはもうわかっている。
量子コンピューターにシリコンを使う戦略により、
インテルは量子ビット(量子コンピューターの計算機能の
最小単位)を研究する業界や学術グループで頭ひとつ飛び出した存在だ。
他社は超電導回路製の量子ビットを複数組み合わせた
試作チップでコードを動作
シリコン製量子ビットをここまで進歩させたのは、今のところインテルだけだ。

本格的な量子コンピューターの実現には、何千、何百万の
量子ビットを組み合わせる必要がある。
インテルの量子コンピューティング・プロジェクトを率いる
ディレクターのジム・クラークは、シリコン量子ビットによって
量子コンピューターが実現する可能性が高いという
(ただしインテルは超電導量子ビットも研究している)。
シリコンを使うメリットは、何億個のトランジスターを組み合わせる
従来の半導体製造の専門技術と機材を使って、
シリコン量子ビットを完成させ、
集積規模を急速に高められることだ、とクラークはいう。

インテルのシリコン量子ビットは、市販されている
既存の半導体チップの改造版に閉じ込められた
単電子の「スピン」と呼ばれる量子的性質でデータを表す。
「一番いいのは、最高のトランジスター回路を作り、
材料と設計を少し変更するだけで
最高の量子ビットを開発できることです」とクラークはいう。

シリコン量子ビットをインテルが実現したい別の理由は、
シリコン量子ビットのほうが超電導量子ビットより信頼性が高いことだ。
シリコン量子ビットでも、非常に弱い量子効果でデータを処理するため、
すべての量子ビットはエラーを起こしやすい
(“Google Researchers Make Quantum Components More Reliable”参照)。

ニューサウスウェルズ州立大学(オーストラリア)で
シリコン量子ビットを研究する アンドリュー・ズーラック教授は、
インテルが素材企業のユレンコ(Urenco )や
エア・リキード(Air Liquide)と共同開発した、
一般的なシリコンウエハー上の量子ビットの実験を支えた
製造工程により、インテルのシリコン量子ビットの研究は早まるはずだ、という。
「数百、数千個の量子ビットを組み合わせるには、
途方もない工学的確実性が求められますが、
それこそが半導体産業の特徴なのです」とズーラック教授はいう。

超電導量子ビットを開発する会社も、
既存の半導体チップ製造方法で超電導量子ビットを開発中だ。
しかし、結果としてできる装置はトランジスターよりもサイズが大きく、
大量生産のノウハウがまだない、とズーラック教授はいう。

グーグルやIBMが開発しているのと同様の
リゲッティ・コンピューティングの創業者である
チャド・リゲッティ最高経営責任者(CEO)も、
最低数百個の量子ビットをどうすれば
高精度に集積できるかが課題であることに同意する。
しかしリゲッティCEOは、リゲッティ・コンピューティングも選んだ
超電導量子ビットのテクノロジーのほうが有利なスタートを切っており、
量子コンピュータの実現を妨げる諸問題に対処するための
十分な時間と人的経済的リソースを得られるという。

グーグルもリゲッティも、特定の分野の計算では、
従来のコンピューターよりも計算速度が劇的に早く、
化学や機械学習の分野でも課題解決に貢献する
数十~数百万個の量子ビットが埋め込まれた製品を、
あと数年のうちに製造するようになるという。

「量子コンピュータが人工知能を加速させる」――。
そんな文言を聞いたら多くの読者は驚くに違いない。
多くの読者は未来を期待せずにはいられないはずだ。
しかし量子コンピュータという言葉に多少なりとも抵抗を感じるはずだ。

 量子コンピュータは1990年代から現在まで多くの研究が積み上がり、
今後の計算技術の新機軸となるのは
間違いないだろうと期待されている技術だ。
しかしながらその実現には多くの年月が必要とされるだろうと言われて、
実際の利用やビジネスの世界での応用には
程遠いものと敬遠されてきた側面は否めない。

GoogleとNASA(米航空宇宙局)が2015年暮れ頃に
D-Wave Systems社が販売する世界初の
商用量子コンピュータに関する研究成果を報告した。

 「既存のコンピュータより1億倍速い」という
センセーショナルなニュースは瞬く間に世界に広がった。
そもそも量子コンピュータが販売されていたということを
この記事を読むまでに知らなかった読者もいるだろう。

 実は量子コンピュータは買える。
その量子コンピュータは、これまでに聞いてきた
「因数分解が解ける」というようなものとは異なるものである
しかしその量子コンピュータは、ビジネスでの活用が最も近い、
実用面でのメリットが非常に大きいものであることがわかってきた。

 この量子コンピュータは、超伝導の微小リングを集積化した
チップでできており、ありとあらゆる可能性を探索して
「最適な解答」を瞬時に割り出すことができる。
今となっては当たり前になっている地図上での
最短経路を探し出すというものも
「最適な解答」を求めるというタスクだ。
世の中は最適化問題であふれている。

 例えば金融。どの金融商品を買うかどうかの判断には
利益とリスクの両者を考慮した上で「最適な解答」を要求される。
そのような問題の解決に実際にこの量子コンピュータは利用されている。

 この量子コンピュータの動作原理は
「量子アニーリング」と呼ばれるもので、日本人の研究者が
発案した計算手法であり、その方法に準じたコンピュータを
実際にカナダのベンチャー企業である
D-Wave Systems社が製作したのだ。

 通常のコンピュータでは、この手の「最適な解答」を求める場合には、
「どうやって解くか」というアルゴリズムの作成から
プログラムの入力まで人間が介入する必要があった。
しかし、このD-Wave Systems社が製作したマシンでは、
そのアルゴリズムの作成もプログラムの入力も不要である。

 すべて「組み合わせ最適化問題」を量子力学、
つまり物理の理論を利用して解くための汎用的な解法
「量子アニーリング」で包括的にそれらの面倒な問題を解決している。
非常に優れた汎用的性能を持ったコンピュータである。
人間が担う必要があるのは、「どのような問題を解くか」という
問題設定の部分である。何がしたいのか、
が明確な業種での導入は比較的容易である。
実際に北米を中心にD-Waveマシンを購入する顧客も増えており、
時間貸し契約に基づくエンドユーザーが増加中だ。

 日本でも後を追って、最適な解答を探し求める
専用ハードウェアやチップの開発が進んでいる。
日本人だからといって、その完成を待つ必要はなく、
どのような問題を解くべきか、
解いたらどんな利益を生み出すことができるのか、
その点について考えておかないと日本では時代遅れの企業や
サービスしかなくなってしまうかもしれない。

 さて、このD-Waveマシンについて気になる情報がある。
最適な解答を見つけ出すために作られたマシンであるが、
多くのユーザーが魅力を感じてD-Waveマシンを
利用している理由は実は「機械学習」での応用だ。
最適な解答を出すためのマシンが
機械学習に利用できるというのはどういうことだろうか。

 この5月にD-Waveの役員やエンジニアたちが来日して
彼らのサービスやテクノロジについての説明があった。
その際にD-Waveマシンのデモンストレーションが行われたのだ。
D-Waveマシンの利用時には、解きたい問題を
ウェブブラウザ上で入力して、そのままその情報をマシンに伝送する。
メールを送る感覚だ。
そのあと瞬時に何度も同様な計算を繰り返して、
その結果出てきた計算結果を返してくる(youtubeのデモ映像)。
D-waveマシンで最適化問題を解く様子

何度も繰り返し同じ問題を計算した結果がリスト上に掲載されて、
その中から「最適な解答」を選ぶのだ。これをどうみるだろうか。
量子アニーリングの理論では、
最適な解答を「確実に」求めることができるとされている。

 しかしD-Waveマシンでは現状、
最適な解を「確実に」求めることはできないでいる。
物理の法則によりD-Waveマシンの中で
計算を行う部分が「冷えて」しまうからだ。
D-Wave Systems社のMohammad H. Amin氏によって
行われた評価(Phys. Rev. A 92, 052323 (2015), 
この論文は誰でもarXivから読める)によると、
冷えてしまう前に計算を終える必要がある。
論文Phys. Rev. A 92, 052323(2015) より引用。
横軸は計算にかけた時間。
縦軸は得られた「最適な解答」が正確である確率を示す

D-Waveマシンの振る舞いを予測した結果は青線で示しており、
現状のD-Waveマシンの計算時間に相当するのは緑色の領域である
この緑色で示されたQuasistatic(準静的)領域は
「冷えて」しまった状態となることを示しており、
赤線で示された量子アニーリングの理想的な環境において
期待される性能とはかけ離れたものとなっていることがわかる

 そのためにはもっと高速に操作をする必要があり、
その点の改良が進んでいるそうだ。
それでは「最適な解答」を
確実に出すことのできない欠陥商品なのだろうか。
日本であればそれは失敗と言われ、
がっかりされてしまうのがオチである。

 しかしながらそこに可能性を見出しているのが、
北米を中心としたD-Waveマシンを利用するユーザーたちだ。
これを機械学習で最も計算時間がかかっている
ボトルネック部分の解消に利用しようという動きがある。

 多くのデータからその法則性を読み解き、
コンピュータがその法則性に基づき、さまざまなタスクをこなす
機械学習技術が注目されて久しい。
現状その勢いはとどまることを知らず、
犬や猫の画像の単純な識別のみならず、
学習したデータから似たような画像を生成することで、
「想像」することすらできるようになりつつある。

 われわれ人間と機械とで異なるのは、
この想像の部分であるという声もあるが、
実は機械学習を用いることで、
これまでに得られたデータに基づいて、
それに近しい画像を次々と生成することができる。

 画像に限定する必要はなく、音声やテキストなども対象となる。
人間が想像する際にも経験に基づいていることは間違いなく、
機械がまさに人間の知能に
近づいている足音がして聞こえてくるではないか。
その技術の基本となるものが「ボルツマン機械学習」だ。

 ボルツマン機械学習では、コンピュータの中で似たようなデータを
擬似的に作り出すデータ生成器を作る。
試しにデータを何度か吐き出して、すでに得られている
現実のデータとその傾向に合わせるという方策で
データ生成器を自動的に構築する。
一般的によく知られているタイプの機械学習の
アルゴリズムとも大きく異なるものではない。

 例えば顧客の購買予測について議論するのであれば、
顧客のタイプを入力して、その顧客が実際に購入した商品を出力し、
その入力と出力の関係をコンピュータは学び取る。

 その際に入力から出力を吐き出すデータ生成器を
内部で構築するのが機械学習の一般的なアルゴリズムだ。
データ生成器から出力を試しに出して、実際のデータと
合致するかどうかにより、そのデータ生成器にひたすら改善を加えていく。

 ただしボルツマン機械学習のように、世の中にある画像や
音声などのデータを学習して、それと近いデータを
生成するようなタスクの場合には、
同じデータを出すことが目的ではない点がポイントだ。

 参考とするものはデータそのものではなく、
あくまでデータが出てくる傾向である。

 そのため多数のデータを利用することはもちろんだが、
コンピュータの中で構築したデータ生成器からも
大量のデータを試しに出させて、実際のデータと
擬似的に作り出したデータの
それぞれの傾向を比較しなければならない。

 そこで必要とされるのは
「速く(疑似)データ生成ができる方法」である。

 しかし既存のコンピュータでは、そのデータ生成を行う際に、
データの内部にある複雑な事情を考慮した計算が必要があるため、
擬似データを生成するには非常に長い時間がかかってしまうのだ。

 この「擬似データ」を高速に次々に生成するために
量子コンピュータであるD-Waveマシンを利用するという
試みが始まっているのだ。

 「最適な解答」を確実に取り出すことには
失敗しているD-Waveマシン。
実際に利用してみると、そこそこ参考になる
「良い解」を高速に多数出してくれる。
この点に注目してみよう。その出てくる多数の解には
何か特徴はないだろうか。
実はその特徴が「ボルツマン機械学習」を
実行するのに最適な特徴を持っていたのだ。

 元々はボルツマン機械学習というのは呼び名の通り、
ボルツマンという人物に関係した方法である。
ボルツマンは、「無数の粒子の振る舞い」の傾向を調べるために
統計の考え(統計力学)を導入したのだ。

 その際に発見された事実が、
「自然界で無数の粒子が集まると
特別な傾向を持つ」ということだ。
この傾向について研究が進み、
「物質の状態を探る方法論」として活用された。
対象を物質を構成する原子や分子などの
小さい粒の集まりとして捉え、
その集団が示す統計に注目するというわけだ。

 ひとたび、データに目を向けてみよう。
例えば画像データは各ピクセルに色情報が乗ったものだ。
それは整然と色のついた粒が並んでいる状況と同じではないか。
「大量のデータが集まれば、無数の粒子が集まった場合と同様に、
特別な傾向を持つだろう」――。
その大胆な仮定を出発点として確立した方法論が
ボルツマン機械学習である。
データが出てくる傾向を調べるため、実データとを比較するのに
必要な「擬似データ」を高速に生成するために
量子コンピュータであるD-Waveマシンを利用するという
試みが始まっている(大関真之氏 提供)

 D-Waveマシンの計算原理である
自然界のルールに従うものである。
量子力学に基づく計算のために、強い横磁場をかけて
人工的な状態を作り出し、そこから最適な解答を求める
計算を行うために横磁場をだんだんと弱めていく。
その過程が「ゆっくり」していると、
計算を行うチップ部分が「冷えて」しまうのだ。

 現状ではD-Waveマシンの動作は、
この「冷えて」しまう早さに比べてゆったりとしているため、
最適な解を確実に取り出すことができない
(10マイクロ秒程度で
われわれのスケールに比べたら非常に高速だが)。

 さて極低温の環境下にあるために冷えてしまったチップだが、
しかし冷えるということは自然の摂理に従っている状態というわけだ。
もはや計算のために用意した人工的な状態とは異なる。

 この状態の結果はボルツマンが発見し、統計力学が示す
「無数の粒子が集まると特別な傾向を持つ」という
ルールに従っていることがわかってきた。
つまりD-Waveマシンから出力される「良い解」の傾向を調べると、
無数の粒が従う特別な傾向を示すものと同様であるということだ。

 それではボルツマン機械学習で必要とされる、
実際のデータとの傾向を比較するのに必要な
「擬似的なデータ」を高速に次々に生成するために
D-Waveマシンを利用すれば良いのではないかということになる。

 最適な解を確実に見つけるという
当初目標にはまだまだ道のりは長いが、
現状できているマシンをうまく活用する道筋を見つけ出したのだ。

実現は早くても21世紀後半と言われていた
「量子コンピュータ」が突然、商用マシンとして販売が開始された。
作ったのはカナダのメーカーだが、
その原理を考え出したのは日本人研究者
画期的な量子コンピュータの計算原理、
「量子アニーリング」を発案した本人が語る。 

西森秀稔(著)大関真之(著) 
量子コンピュータが人工知能を加速する

 テクノロジについてあまりに精密さと完成度を求めすぎて、
新しいことが生み出せないでいるこの時代に、
このようなエピソードは痛快である。

 「失敗」をしたプロジェクトに対して、
ストーリーを変えて新しい成果を導いた、
と言ってこられても、「それはすごい」と素直に言えるだろうか。
失敗を恐れず、どんなことでも真っ直ぐに進み、突き抜ける。
そういった思い切りの必要性をこの量子アニーリング研究の
最前線に身を投じてみるとひしひしと感じる。

 日本人が発案した「量子アニーリング」の技術を実現した
カナダのベンチャー、そしてそれを活用しようと
多くのチャレンジが渦巻いているGoogleや
NASAの量子コンピュータ導入といった北米の活況

 その様子を、指をくわえて待つほど日本人は愚かではないはずだ。
そんなエキサイティングな世界が、量子コンピュータと
機械学習をはじめとする人工知能開発の交差点にはあるのだ。

大関 真之(おおぜき まさゆき)
東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻准教授博士(理学)。
京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻助教を経て現職。
専門分野は物理学、特に統計力学と量子力学、そして機械学習。
2016年より現職。独自の視点で機械学習のユニークな利用法や
量子アニーリング形式を始めとする新規計算技術の研究に従事。
分かりやすい講演と語り口に定評があり、
科学技術を独特の表現で世に伝える。

2016.8.5 01:23 産経ニュース
膨大な医学論文を学習した人工知能(AI)が、
60代の女性患者の白血病が治療などが
難しい特殊なタイプだと10分で見抜き、
適切な治療法の助言で
回復に貢献していたことが4日、分かった。
治療した東京大医科学研究所は
「医療へのAI応用に大きな手応えを感じた」としている。
 同研究所が使ったのは、米国のクイズ番組で
人間のチャンピオンを破った米IBMのAI「ワトソン」。
同研究所はAIが患者の救命に役立ったケースは
日本初ではないかとしている。

 治療に関わった東條有伸教授は
「AIが医療分野への応用に
非常に大きな可能性を持っていることが実感できた。
将来は診断や治療の方針づくりに役立つだろう」と話す。
 膨大なデータの学習で的確な判断を行うAIは、
多様な分野で応用が模索されているが、
今後は医療への応用が本格化しそうだ。
 女性患者は昨年、血液がんの一種である
「急性骨髄性白血病」と診断され同研究所に入院。
当初の半年間は2種類の抗がん剤で
治療したが回復が遅く、敗血症などの恐れも出てきた。
 東大は昨年からIBMと共同で、
がんに関連する約2千万件の論文をワトソンに学習させ、
診療に役立てる臨床研究を行っていた。
そこで、女性患者のがんに関係する遺伝子情報を
ワトソンに入力したところ、急性骨髄性白血病のうち、
診断や治療が難しい「二次性白血病」という
特殊なタイプだとの分析結果がわずか10分で出た。
 ワトソンは治療法の変更を提案し、
臨床チームが別の抗がん剤を採用。
その結果、女性は数カ月で回復して退院し、
現在は通院治療を続けているという。

日本IBMは30日、同社の
コグニティブコンピューティングプラットホーム
「ワトソン(Watson)」の開発状況について報道機関向けの
説明会を開催した。ワトソンは、名前は見かけるが、
内容については正しく理解されているとは言い難い。
IBMが目指す第3世代コンピューティングシステムの
現状と未来についてレポートしよう。

スタートはクイズ番組
ワトソンは元々、コンピュータが自然言語で投げかけられた質問に対し、
文脈を含めた質問の意図を理解し、回答する
「質問回答システム」としてスタートしたプロジェクトだ。
2011年にはコンピュータが学習能力のみで米国のクイズ番組
「ジェパディ!」に答えられるのか、という企画が行われ、
百科事典など書籍約100万冊分のテキストデータを学習した
ワトソンが人間と対決して勝利を収めている。
この対決ののち、
ワトソンは一般デベロッパー向けにも提供を開始している。
IBMはワトソンを、自然言語を理解し、
人間の意思決定を支援するための
「コグニティブ・コンピューティング・システム」と呼んでいる。
「コグニティブ」とは「認知」という意味の単語で、
コンピュータが言語を認識し、文脈等を類推して
学習を重ねていくアプローチのシステムだ。
IBMはこのコグニティブ・コンピューティングこそが、
コンピュータにおける
第3世代のコンピューティングであると定義している。

第1世代はデータを入力して単純な演算結果を得られた、
初期のコンピュータ。第2世代が現在我々が使っているような、
プログラム(アプリケーション)によって
さまざまな汎用的な処理を行えるようになった状態だ。
そして第3世代では、プログラムを用意しなくても
コンピュータが自分で収集した情報からさまざまに類推し、
学習を深めていき、人間がコンピュータの助けによって
専門知識を拡張したり、
知識や技能の習得を早められるようになる。
コンピュータやインターネットの登場(いわゆる情報革命)により、
現代は、人間がひとりで処理するには
あまりに膨大なデータが溢れている状況だ。
たとえばSNSから得られる非構造化データと、
センサー類から得られるデータをそれぞれ相関性を持った形で
処理する必要があるが、今のツールではそうしたことができない。
ワトソンはまさに、そうした独立したデータ同士を分析し、
意味のあるものに変換するためのツールなわけだ。

個性の異なるさまざまなワトソン

ワトソン自体は、IBMのサーバー上に
構築されたLinux上で動作するソフトウェアだ。
用途によってクラウドで提供されることも、
ハードウェア込みのシステムで提供されることもあるが、
例えば医療向けとサポート向けに
まったく同じシステムが提供されるわけではない。
ワトソンは各分野ごとに最適化するよう、
取得するデータの重み付けや分析する言葉の傾向、
出力内容などといったアルゴリズムを変更することができ、
それが20以上のAPIのパッケージとなって提供されている。
つまり、目的によって
様々な個性を持ったワトソンたちがいることになる(ちなみに、
ワトソンは物理的にも複数存在する)。
それぞれのワトソンが蓄積した学習結果は、
ひとまとめにされることはなく、個々のシステムとして
育っていく。この点は、巨大なサーバーファームの中で
世界中のデータを喰らって巨大化していく印象のある、
Googleの人工知能とは性格を異にした存在だと言えるだろう。

どう使われているのか
基本的に、ワトソンの機能は「データを与えて学習させ、
質問を投げかけるとデータから答えを類推して回答を導き出す」ことだ。
質問の入力として自然言語を認識でき、
データソースとしてはテキストだけでなく、
画像や音声、動画、MRIや
レントゲンからの入力なども加えられているという。
ワトソンでは莫大なデータを人間では不可能な速度で解析し、
最適な対応を導き出せるため、たとえば投資分野においては、
アナリストなどから毎日発行される数千以上ものレポートを検証し、
次に投資するべきターゲットの候補をピックアップする、
といったことも実現できる。
もっとも、これだけであれば、ちょっと気の利いた検索機能と
大差ないように思えるが、ワトソンでは莫大なデータから、
ワトソン自体が類推して「発見」または「発明」と呼べるような
新しい回答を導き出せる点が異なる。
現象としては、人間がふとしたことから思いつく「発想」に近い。
たとえばその一例として、料理誌「ボナペティ」と共同で、
ワトソンに化学や文化、
食品に含まれる成分などの情報を与えることで、
新しいレシピを考案する「シェフ・ワトソンwithボナペティ」という
試みが行われ、実際にまったく新しいレシピも考案された。
これは、単なる検索ではできない機能だ。
また、医療分野ではiPhoneで肌を撮影した画像を
ワトソンが解析・学習し、メラノーマ(悪性黒色腫)と
そうでない皮膚を見分けるシステムが構築されている。
診断率が高くなれば、医療機関に通わなくても自己診断が可能になるし、
専門家でなくとも早期に異常を発見して
治療に結びつけることもできるようになるわけだ。
また、現在は教育分野においても
コグニティブ・コンピューティングを
役立てようと開発が進められているという。
特定の問題をかかえる生徒に対し、
教師が対応するためのアシスタント的な役割を果たすという。
米国ではワトソンを使った「CogniToys」というおもちゃが登場している。
このワニのおもちゃに話しかけると、無線経由でインターネットに接続し、
ワトソンがバックボーンで処理をして子供からの質問に答える。
子供の年齢や好みを理解して会話のレベルを変えることもできる。
また、ワトソンをソフトバンクの「Pepper」のバックボーンとして
動作させるデモでは、ヤマダ電機の店員として、
客と4Kテレビの商談を自然な日本語で行う様子が公開された。
ロボット店員というのもまるでSFのような話だが、
すでに実現まであと一歩というところまで来ているようだ。

Watson Yearの1年は実世界の4年分

ワトソンのロードマップについての質問があったときに、
IBM Watson事業シニア・バイス・プレジデントの
マイク・ローディン氏の口から、興味深い言葉がでた。
ワトソンの開発チーム内では
1四半期で通常の1年分の進歩があるという。
つまり1ワトソン年=通常の4年分というわけだ。
ローディン氏は、2013年にワトソンの事業をスタートさせたとき、
2015年にどんなことができるかはさっぱりわからなかった。
従って将来ワトソンがどうなっているかは、
まったく予想ができないというのだ。
通常の4倍もの速度で進化を続けるワトソンは、
やがてさまざまな形で
自然に人間の知的生産を支えるツールになるのだろう。
ワトソン自体は前述したように
サーバー上に構築するシステムなので、
クラウドと連携して動作する機会の多い
スマートフォンとは相性がいい。
将来は、たとえばニュースアグリゲーションサービスも、
ワトソン経由で記事の内容までを加味して配信が行われるなど、
まるで自分だけの秘書のように動作するワトソンサービスを
多数使い分けるような時代もそう遠くはなさそうだ。
日本においてはIBMはソフトバンクと
共同でワトソンの日本語対応および日本の事業者への
導入拡大を図っており、
初期エコシステムのパートナーとして9社が発表されたほか、
東大医科学研究所がワトソンを使ったがん研究を開始するなど、
その一歩を踏み出したところだ。
これまでの4倍の速度で進化していくワトソンを使い、
日本ならではのサービスが生み出されるのか、期待したい。

2016.6.20 14:00 2 3 4 【AI新時代・番外編】産経ニュース
加速する人工知能開発…日本のものづくりに勝機
世界で最も高度なゲームとされる囲碁で人間に圧勝するなど、
急速な進化が続く人工知能(AI)。
あらゆる産業に応用できるため研究開発競争が世界的に激化している。
トップを走る米国と比べ「周回遅れ」といわれる日本の活路を探った。
(伊藤壽一郎、黒田悠希)
                  ◇
 AI研究は1950年代に始まった。
2010年以降の第3次ブームでは
自動運転車やスマートフォンの音声対話システム、
人の感情を読み取り臨機応変に対応するロボットなど、
身近な生活への浸透が著しい。
 だが話題の多くは米国発で、日本の存在感は小さい。
みずほ情報総研の能瀬与志雄シニアマネジャーは
「今は海外との差が最も大きい時期だろう」と分析する。
 ブームの谷間には、
技術的な問題などで行き詰まった「冬の時代」があった。
この時期に日本で多くの研究者が
開発を離れたことが米国との格差の一因だ。
 人材が減れば研究は停滞。投資も伸びなかった。
能瀬氏によると、日本政府のAIへの研究開発投資は、
グーグルなど米大企業の1社当たりと比べ、約1割にとどまるという。
 さらに、米国では大学などの研究機関よりも、
民間企業の開発が先行している。機動力を駆使して
技術開発できるベンチャーも
日本より層が厚く、研究者や技術者の流動性も高い。
 打開策について能瀬氏は「日本の伝統的な強みを
産業に生かす戦略が、短期的には必要ではないか」と話す。
 米国などが先行している膨大なデータ収集や、
投資規模の舞台で戦うのはリスクが大きい。
一方、日本のものづくり現場は、高品質を達成する
職人芸的な“匠(たくみ)の技”を多く持ち、
国際的にも高い信頼を勝ち取ってきた。
こうしたノウハウとAIを組み合わせれば、
独自の分野で勝機を見いだせる可能性がある。
               ◇
 人工知能学会会長・松原仁氏
 ■巻き返しはこれから
 米国には以前から、AIにおける優位性を
絶対に失ってはいけないという強い覚悟がある。
これはAIが安全保障や軍事と密接に関係していることが大きい。
 米国防総省は研究に巨額資金を投じ、
イラク戦争ではAIを搭載した無人兵器の投入で
人的被害を最小限に抑えた。
小型無人飛行機ドローンや災害救助ロボットも生み出した。
「冬の時代」も研究開発が途絶えず、
AIで米国がトップの座を明け渡したことがないのは、
国家一丸の素地があるからだ。
 一方、日本は今、世界的な研究開発競争で
第2集団の中位に埋もれている。
第3集団の中国、韓国の追い上げも激しい。
AIを持続的成長の起爆剤にするなら、
米国に追いつくのは無理でも、
第2集団のトップにならなくてはいけない。
 このため国が4月、省庁の縦割りを廃して設置した
司令塔の人工知能技術戦略会議に期待している。
日本の研究は水準は高いが、バラバラに行われて効率が悪かった。
これらをまとめる枠組みづくりや
人材育成、産業への橋渡しを推進するもので、
AI研究に長年求められていた体制が
ようやく整いつつある。日本の巻き返しはこれからだ。
                ◇
 産業技術総合研究所人工知能研究センター長・辻井潤一氏
 ■米国型は曲がり角に

 米国ではグーグルやアマゾンなどが、
自社で持つ膨大なデータを利用し、
AIを宣伝やサービス提案などに活用してきた。
それが巨大ビジネスに成長しAI研究自体も進展したが、
日本にはそういう情報産業がないため国際競争に出遅れ、
投資規模も小さいままだ。
ただ、データからの直接的な価値創造は限界で、
米国型AIは曲がり角にさしかかっている。
だから自動運転車や医療、創薬など
異業種に進出し新たなビジネスモデルを模索している。
 だが、異業種には既存の大手企業が存在する。
既存企業の方がさまざまなノウハウがあり、有利なのは自明だ。
グーグルやアマゾンがいくら大きくても、
すべてを圧倒できはしない。
 こういった変わり目にこそ、日本の勝機がある。
これからのAIは、多様な既存産業との連携が必要となる。
そして、日本には高いものづくり技術を誇る製造業があり、
サービス業も医療も先進国だ。
強いパートナーには事欠かない。
 また、日本は細分化した顧客ニーズに合わせて
サービスを提供するのが得意だから、
業種ごとに差別化したAI技術をきめ
細かく構築できるだろう。挽回のチャンスはまだある。
                  ◇
 プリファード・ネットワークス最高戦略責任者・丸山宏氏
 ■スピードと頭脳で勝つ

 AI関連のベンチャーである私たちの企業理念は、
最先端の技術をいち早く世に届けることだ。
中でもAI研究を飛躍的に進展させた機械学習分野に特化し、
ニッチ(戦略的な立ち位置)を取っていく。
 注力しているのは、製造業でのイノベーションだ。
高度な機械学習を応用すれば、
ものづくりの在り方が劇的に変わるはずで、
大きな可能性を感じている。
 旧来のものづくりでは、製品の開発から完成形の製造まで
年単位の時間がかかっていた。
だが、高度な機械学習を導入すれば開発スピードが飛躍的に向上。
世の中の変化に分や秒の単位で対応できるようになる。
 これには非常にスピーディーな意思決定が組織に求められる。
大きな組織はとにかく意思決定に時間がかかる。
しかし、社員数約40人の私たちの意思決定は非常に早い。
 AI業界はハイレベルな頭脳の奪い合いだが、
(組織がより硬直的な大企業と違って)ベンチャーは
人材の流動性が高く、非常に優秀なスタッフを集められた。
 機械学習の競争の舞台は狭い日本だけでなく世界全体だ。
米大企業の層の厚さにはかなわないが、
私たちはスピードと頭脳で勝つ。
スピードはグーグルにも勝る強みだと思っている。

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